開発ストーリー:いろポチができるまで


当社がいろポチのお話を最初にいただいたのは、2014年の春。佐川先生の考案した色彩概念を基にさまざまな試行錯誤を重ね、およそ4ヶ月後の2014年8月に現在の形が誕生しました。そもそもなぜいろポチをつくろうと思ったのか。なぜこの形状なのか。開発した目的・経緯・そこに込められた想いとは。開発者である佐川先生にお話を伺いました。

ご存知でしたか?目の見えない方も色を知っているということを。

色に関する研究を続けていく中で、先天的に目が不自由な方たちも、色を把握していることを発見しました。例えば「黄色はひよこの色で明るく可愛らしい色」、「赤は情熱的な色で、信号の緑と赤は正反対の色」など...。多くの視覚障がい者が、それぞれの色の特徴はもちろん、関係性までをも把握していること。そして他の誰かに頼ることなく、自分で色を選びおしゃれを楽しみたいと思っていること。このような彼らのニーズを、何とか形にしたいと思ったのが、いろポチプロジェクトが始まったきっかけでした。


“感覚的”に色を把握できる、色相環を使った認識方法。

色の認識方法には、色彩の基本概念である「色相環」を使って表現することにしました。目の不自由な方を対象におこなった事前研究により、彼らが把握している色の名前や概念を図式化すると、色相環と同じような環状になることがわかっていました。また、色相環は色の名前を点字で表現する方法に比べ、色の類似性や違いなどを感覚的に把握しやすいというメリットもあります。実際に、基本色10色を円上に小さな凸点として並べ、触って認識する実験をおこなったところ、およそ9割もの方が認識に成功しました。

 

 

視覚障がい者の色彩に対する概念を体系化すると、図のようにほぼ円形状の関係性で把握していることがわかった。



さまざまな対象に活用できる、「タグ」というデザイン。

色相環を使ったデザインに決定したところで、今度はどうやって形にするか。そこで、旧知であるアパレル団体の紹介で出逢ったのが、(株)フクイでした。触覚で色を認知するには、どのような素材が最も適しているか? 凸点の大きさはどのくらいが望ましいか?など、アパレル副資材専門メーカーならではのアドバイスを基に、さまざまな検証・試作を重ね、現在のいろポチのデザインが完成しました。およそ3×5cm四方のサテンテープに、環状に並べた小さな凸点と穴で色を認識する新しいデザイン。Tシャツやスカートはもちろん、スカーフや帽子など、幅広い製品に違和感なく付けることができるタグです。

 

 

タグの形状や素材、突起の厚み具合などに工夫を凝らしながら、さまざまなサンプルを作成。見た目にも触った感触にも最も最適な現在のデザインが生まれた。



いろポチに込めた想い。すべての衣服への活用をめざして。

視覚障がい者の方々を対象に開発されたいろポチですが、国や地域を越え、いずれは世界的なスタンダードになって欲しいと考えています。すべての人が共通ルールを用いて、色やおしゃれを楽しむ。共有する。そんな当たり前のことが、豊かな社会につながっていくのではないでしょうか。2020年には東京オリンピック・パラリンピックが予定されています。選手達のユニフォームにもしこのいろポチが付いていれば、大きな反響を呼び、新しい価値として社会的に広まっていくかもしれません。普及までの道のりはまだまだ長いですが、このいろポチを通じて、社会が、人が、より幸せになっていくと信じています。

■プロフィール

佐川 賢

産業技術総合研究所 名誉リサーチャー
工学博士